[片言の礼にもういちど、細い指先で頬を掻いて、ふと思い至る。] ――ああ、そうだ。 君、アオギリ高校の子で良いんだっけ。[それはまるで年下への口調だったけれど、まあ、自分は三年生だし。どうにでもなるだろう。初対面の相手には名乗っておこう。意外な反応をした彼が、面白い人なら良いなあ。] 私、山吹の三年だった。 くしろみや。久しい代に、美しい夜。 よろしくね。[そんな思いを抱きつつ。校舎へと歩み出す彼の背に向かって、軽い自己紹介をするだろう。聞こえたかは、定かではなかったけれど。]
(121) 2014/10/15(Wed) 01時頃