――聖都レグレシア・市街地――
[クラウディアと違う点は、自分はこうして大して豪奢でもない装いなら人目に止まる事もそうそうないという点だ。もとより、一般の市民は教団の上層部の者達の顔などそうそう知らない。
声もかけなければ、まして威張り散らすわけでもない。そもそも、極めて重要な聖儀を除けば公の場に出る事もさほど多くはない。
遍く世界に光照らす立場の者でありながら影流とは、とごく気安いものにだけ愚痴交じりに皮肉をこぼしたこともあった。]
……あら。どうしたの?そのように騒がしくして。
[ふと、人だかりを目にして、近づいてみる。黒い刺青のような文様を刻んだ、大剣を持った男が円座の中央にいた。
その漆黒の大剣に自然と目がいったのは、偶然ではなくて。思わず近づいていた。]
……あら、どうしました?どこか怪我でも?
(121) 2014/08/13(Wed) 21時半頃