[無理だろうな、と分かっていながら、しゃがみ込んだままの姿勢で扉を押してみる。
当たり前のように、ぴくりとも動かなかった。
そんな秋野の脇で、健五郎が静かに呟く。
瞬きをして、少しの間を置いてから、答えた。]
……そんでも。
やっぱり、夢は、いつかは醒めるよ。
[言ってることが前と違うじゃないか、と言われそうなものだったけど。
文化祭を模した夢の世界だって、最初はあんなに楽しかったのに、今の秋野の心は弾まない。
だから、夢は、長くは続かないんだろう。そう、秋野は思う。]
いってらっしゃい。
あ。後で、教室、戻って!
[この夢の世界で、たったひとつ、集合場所のようになっているホームルーム。
そこへ戻るようにと伝えて、秋野は健五郎とは別の方に歩き出す。
もしも他に誰かがいたら、行き先は保健室だと伝えるだろう。
女子が誰か残っていないか、それからついでに、健五郎に渡す絆創膏でも取ってこようか*]
(120) 2015/06/24(Wed) 19時半頃