[間も無く、と気怠げな放送が響く。
恐る恐るもう一度男性の方を見上げると、とても頼もしい顔で頷かれた>>119。
ありがとう知らない人、騒動を起こさずに済みます。と肩を竦めて親指を立てる。
駅に着いたなら、おります、と蚊の鳴くような声で宣言してから、ザックを抱え、人の圧に押し潰されないように腕で守りながらのろのろと下車する。
これで大丈夫と思いきや、甘える様な『ゔー』という寝言。
…兎の鳴き声を知らぬ人間が世の中大多数でよかった。
電車の扉が再び閉じて、動き出す。
青年は男性に軽く手を上げるだけのジェスチャーで、別れと礼をを告げる。
見送るように、きょとりとザックから耳と顔を半分出したねぼすけ兎に気付いたのは、
風景を眺めるのが好きな好き者か、兎の存在に気付いた者だけだろう]
…ああ、もしもし…綿貫っす。
院長センセ起きてらっしゃいます? それが……
[一呼吸おいて、すぐに電話。
ああやれやれ、これが師走か。違うだろうが]
(120) 2015/11/01(Sun) 22時半頃