ー ある旅の一ページ ー
[砂漠の街でアイスを売った金を寄付して過ごしていたある日、マーケットの一角で偶然シルクが【白い犬】のタペストリーを見つけたんだっけ。
丁寧な手織りで織り上げられた>>3:427図相が何だか俺に似てるって。
機織り職人の老婆は話してくれた。]
「昔昔のことさ、この辺りを酷い日照りが襲ってねェ……飲み水も無く渇いて死ぬ人間もたくさんいて、この通りが死体で埋め尽くされたってくらいさ。
ここはまなびやからも遠いしね。
そんな時、大きな白い犬を従えた一人の少女が現れて、雨乞いの生贄を押し退けてサ、たちどころに雨を降らせてくれたんだって。
だけどその少女は力を使うごとに少しずつ姿が薄くなっていってね……最期には犬だけが残ってたってさ。」
[ずっと昔、雨を降らせた少女を讃えて今でもこうして乾季になると白い犬の描かれたタペストリーを飾るのだと、老婆は言って笑った。
砂漠には来たことがあるような気がする。けれどそんな犬の話は聞いたことがなかった。
俺はその話を聞き終えると……]
(117) ヨキ 2016/10/20(Thu) 01時頃