――昼/大衆食堂『森の真珠』――
[ランチをほぼ平らげて最後のデザートにスプーンをさし]
うまっ。
[本当に美味しいしのだが、ことさら声に出してみたのは、滅入る気持ちを少しでも引き立てようとしてのこと。食事中にも時々出入りする者達からひそひそ声は聞こえてきて。
『森の真珠』のスタッフ・宿泊客の中でもどうやら自分達は最有力容疑者候補らしい。くだんのバルコニーから部屋割りが近かったのも関係するのだろうか。
人狼を見つけなければ犠牲者が増える。自分も含めて。けれども大好きな者達の中に人狼が潜んでいるなんて考えたくもない。もしも自分が容疑者の中から一人を選ぶ立場にあるならば。何か明確な情報がもたらされない限り、関わりの薄い人物…を筆頭にあげてしまうだろうか…。
――姉さんなら、何て言うだろう。誰かを犠牲にするよりは私を…なんて言い出しそうだ。だけど俺は姉さんを一人残して死ねないんだ――
考えれば考える程に思考は堂々巡りする。本人はいたって真剣なのだが、デザートスプーンを咥えたままぼんやりしている姿は、傍から見ればマヌケに見えたかもしれない]
(117) 2017/08/16(Wed) 21時頃