[解読魔術の都合上、魔法を使いたければ魔導書の現物が必要である。
そのためこれまでも魔導書が欲しくなれば各地の魔法使いに売ってくれるようオファーを出してきていた。
……もっとも、魔導書にタダ乗りする自分の魔術はまっとうな魔法使いから見れば外法の類かもしれず、話を持ちかけても返事がないことはザラであった――なので今回も読まずに捨てられたとて文句は言えないぐらいの気持ちで。
手紙の内容は、いつ届くか分からないものだから時節の挨拶は入れない。
代わりにこの地方の情勢を細かく書き記して情報を――メルヤのことを触れたのは気まぐれのようなもので。
魔導書の対価として高級な触媒を数点、手紙に添えた。
有名な触媒なのでとりあえず所持していたが、研究を進めるうちに吸血鬼化の術法には必要ではないと判断できたため余ったもので――魔導書が無ければ返せとか野暮を言うつもりは無かった。]
(117) 2018/06/13(Wed) 23時半頃