「おぉ、あの奥さんの息子じゃないか、藍ちゃんとよく一緒に買いに来てくれてた」
加えて、彼女のお供としても記憶されていたらしい。
奥さんによろしく、と焼きたてらしいナッツ入りのパンを袋に突っ込まれたテッド。つい反射的に返礼の代金を支払おうとしたところで、ここは日本なのだと思い出す。
こういう時には、頭を軽く下げしっかりとお礼をするのが日本のブシドー精神なのである。あくまでテッドの頭の中では、だが。
ともあれ、必要なパンは無事に買えた、早く待たせてしまっている少女の元へ戻らねばと、テッドの歩調が自然と速まる。]
藍、待たせたかな?
それじゃあ帰ろうか、寄りたい場所があるなら付き合うけど……あぁ、そのペンダント、相変わらず大事にしているんだね
良いことだと思う、物を大事にするっていうのはさ
[ 昔から少女が肌身離さず身につけていた黒い羽根のペンダントへと、テッドの目線が泳ぐ。
とても大事な物、と言う話は聞いているが、逆を言えばそれだけで詳しい話は彼も聞いた事はない。]
(まぁ、別に聞くつもりもないんだけど)
[ 女性の秘密に探りを入れた男の末路は、大抵悲惨だと相場が決まっているのだ。]
(117) 2014/06/09(Mon) 11時半頃