ハサミを?
[少し考えて、鉛筆を手に取る。
ハサミを、そう言われたけれど、このハサミはいつだって彼女の手にあって、それで息を吹き込まれているようだったから。
丁寧にふちどって、その色や、輝きや、手触りを残せれたなら良いなと思う。
少女の細い指が支える、赤い柄と、そこから生える銀色の刃を、平面に落とし込んでゆく。
ずっと、見てきたように。彼女が身体の一部のように扱うそれを。]
……リクエストとは、違うかもしんねーけど、
ヨリの指が、それを生かしてるんだって、思ったから。
[白く細い指と、小さなハサミを切り離すことは、どうしたってできなかった。
柔らかく動く指と、それに連動するように刃を開くハサミの、その瞬間を。]
いいかな。これでも。
[はにかんで、頁を見せる。
見たままを描くだけだった少年の、はじめて覚える不安と期待が滲んだ。]
(116) 2014/12/21(Sun) 22時半頃