………。
["優しい"と。そう言う坊主の言葉には、またも答える事が出来なかった。
自分が優しくない事なんざ、自分が一番良く知っている。今だってそうだ、一見優しいように見えるかもしれんが、その実やっていることは……酷く、酷なこと。
それはこの坊主が一番知っているだろうから――その言葉を、言葉通りには受け取れずに。]
……いい子だ。
[引き攣れ頷く声に、静かに告げて。了承されたんだからとっとと腕を離しても良かったんだが、未だ腕は坊主の背に。
ここは先程と違い、教会だ。自分と坊主の他には誰も居やせんから――"人前で泣かれたら面子が立たない"という建前はもう、使えない。
ただ単に、"坊主の泣き顔はあまり見たくは無いから"と。そんな理由すら掲げられん自分は、少しすれば腕を離すしか無いんだ。
鎖を引けば、絡められる腕に少しだけ肩の力を抜く。回されたそれはいつもよりもずっと弱々しいものだったから、目を閉じて眉を寄せてしまいつつ。
指の代わりに、鎖に指を絡めながら。そのまま鎖を辿り、裾に埋もれた坊主の手首を、ほんの一瞬だけ軽く握った。]
(116) 2015/04/11(Sat) 12時頃