ボ、ボクの家かい? まだ封が解かれていないダンボールが山積みだからね、暫くは人を呼べないと思うんだ……すまない
[マミーなら構わず呼びつけそうだけど、と心の中でそう呟いたテッドはトレーを片手に店内へ乗り出す。
そこにはパン特有の香ばしい芳烈な匂いが充満しており、人々の心を刺激する食欲の坩堝であった。]
(頼まれていたバゲットと……あぁ、忘れずに買っておかないとな、メロンパン)
[ パン屋に居たという事は、藍は十中八九を超えて九割九分九輪すでにメロンパンを買っているのだろうとテッドは推測する。
推測した上でメロンパンを買う、彼の中では彼女の前にぶら下げられたメロンパンの余命は一日も無いのだ。少なくとも、7年前まではそうだった。
何処か小動物を思わせるゆるふわ系幼馴染をあまり待たせるのも忍びないと、トレーに素早くメロンパンとバゲット、ついでに自分の分のベーコンエピも乗せ、急ぎカウンターへと足を運ぶ。
テッドにとっては予想外の出来事だったが、パン屋の主人は彼の事を覚えていてくれたらしかった。
いや、彼をと言うよりは彼のマミーの子供を覚えていと言うべきだろうか。
(116) 2014/06/09(Mon) 11時半頃