─廃ビル─
[ちりん、ちりん、音は響く。
欹てた耳は救出対象らしい声があるかどうかを探る。
音を拾いやすい耳とはいえ限度はあったが、それでも人間より多少大振りな白い耳はか細い呻きのようなものを拾う。
多少煩わしい水音はあるが、春日>>92のものであると聴覚は判断する。
上階から聞こえるので階を登るしかないのだが、その最中に違う声>>97>>98を拾った。
自分のところに弟子にしろと押しかけてきたその小柄な存在に一度あしらい、二度断り、三度呆れて、四度目にしぶしぶ首を縦に振った。
僅かでも弱音を吐こうものなら二度と相手にはしないとはっきり言った後の緋室の顔を思い出しながら先に進む。
ちりん、ちりん。
ぴちゃり、と髪から頬を伝って粘液が血だまりに落ちる。
道すがらに緋室が転がって今日ものなら拾い上げることはしたが、それよりも先に惨状を省みて手首のバングルから通信先を選ぶ]
(114) 2018/02/20(Tue) 16時頃