[保田が振り返って、文句を零した。]
……そう、だな。
[そんな、ただの肯定だけ返した俺の表情は、辛そう、とまではいかずとも、困っているようには見えてしまっただろうか。
そうだな、女子が居れば、俺としても、有り難かったんだが。
一歩、前に出て、目の前に並んでいるレースやフリルを見渡して、目的のものを探す。
俺にもこんなの、分かるわけない、と保田に同意して、間違ったものを買って行って、二人で怒られる。
その選択肢も、考えたけど。その方が、ある意味では、安心するけど。
嘘を吐いて、そのせいで保田も怒られて、また買いに来る羽目になる、というのは、流石に申し訳なかった。
目的のもの。フリルレースは、大して時間もかけずに見つけられた。
それもそのはずだ。だって、ほんの数か月前、自分もここに買いに来たんだから。知ってる人が、誰も周りに居ないかと、人目を気にして、こっそりと。
その時買ったのと同じものを、保田が見ている中で手に取った。]
(114) 2017/03/14(Tue) 19時頃