[子供の頃の夢を見ていた。
人狼騒ぎのことは、母親から良く聞かされていた。
『みんな居なくなってしまったの』
そう呟く母の白い顔を、忘れることは今も出来ない。
長老家の末娘だったという彼女は、無実の罪を着せられぬよう、幾人もの"占い師"から真っ先に占いを受けたのだという。
……彼女の潔白は証明されたが、他の家族は全滅だった。
家は滅び、頼るべき親類縁者も居なくなり。その後の数年の空白を、彼女は語ろうとしなかったし...も聞いてはいない。
『ズリエル。あなたは……におなりなさい』
頷かずにはいられない静かな気迫と共に言い聞かせられた言葉は、呪いのように精神に根を張っている。
その後、精神を病んだ母を見捨てるように村を出て、帰ってきたときには彼女は疾うに墓の下だった。悔やむと言うにはまだその記憶は新しい。]
(113) 2010/05/15(Sat) 20時半頃