―回想、父と子と―
[神父であり、村を守るハンターであった父は、よく息子の頭を聖書ではたいた。]
『ぼくの足が悪いのは、ぼくに罪があるからなの。それとも父さんに罪があるからなの。』
[反抗期の生意気な息子からそんなことを尋ねられたときも、いつもと同じようにわが子のの不信心、不勉強を大いに嘆いて、神父の息子なのだからおまえも聖書くらい読みなさいと、頭を小突かれた。]
[誰にも罪などないと、救い主は仰った。おまえは強い子だから、他の人よりも少し多くの試練を課せられているのだと。おまえにならきっと乗り越えられると神様は信じてくれているのだから誇りなさい。父はそう言った。]
[その日だけは、本の角で小突かれたから。そんなことを今でもよく覚えている。]
[父が死に、魔に魅入られた銀の靴を使う冒涜者の吸血鬼ハンターがいるという噂が月下に流れ始めるのは、それから何日も経たないうちのことだ。]
(113) 2014/11/01(Sat) 19時半頃