―廊下―
[崩れていく瓦礫の中、切れかけた電球がぱっと明るくなるように、唐突に麻痺していた痛覚が戻った。そういうことは今までも時折あったけど、何も今じゃなくても、と苦笑する。私はとことん運が悪い。
落ちてきた瓦礫が脚を砕いた。痛くて痛くて、叫びたいのに声も出ない。でもこのお陰で、色んなことを思い出した。初めての狩りの時の傷の痛みも、自分が何で戦っていたのかも。]
[私が殺されても良いと思った、世界でたった1人の吸血鬼……]
ヴァニ、
[最期の言葉を終わらせることさえ許されず、巨大な瓦礫に頭を砕かれた。その一瞬だけ前、走馬灯のように様々なことに思いを馳せる。]
[言い残しておきたいこと、たくさんあった。自分が戻らなければ、妹はあの暗い地下室で、独り飢えて死ぬのだろうか。トニーくんに、お薬のお礼も言ってない。ペラジーお姉さんに、美味しい晩御飯を作るって、約束したのに。]
[結局自分は、いつも中途半端なのだ。それでも、]
[最期に幻覚でも、最愛の双子の妹の姿が見えた気がして、…は満足気に微笑み、死んだ。]
(112) 2014/11/16(Sun) 09時半頃