なんだ、要らねえの?[自信作なのに、とちょっぴりエプロンの結び目の下に垂れる尻尾も俯いて。けれど先ほど料理に手を付けずに誘惑に抗っていたのを思い出してにやりと唇を歪めた。フォークを差し出す手に手を重ねてそっと下ろすと、厨房から何やら木のボウルを一つ取って]これはな、ピッパ、お昼のおやつに作ろうとしたプリンだ。まだ焼いてないからこんなドロドロだけれど……ほら、よく見てみろよ。[まだ乳と卵と砂糖とを混ぜただけのそれを木べらで掻き回しながら、ふう、と吐息を吹きかける。すると見る間にボウルの中の卵液は、氷のように固まって、シャリシャリと音を立て始めた。これが俺の……氷の魔法の力。]
(111) 2016/10/07(Fri) 20時頃