武藤と、加賀宮…意外と仲良いんだね。
[浮かび上がる感情を誤魔化そうとして、意識を動かす。
だが墓穴を掘ったと気付くのはその後だった。
思えばいつからだっただろう。
『雪ちゃん』が『武藤』になったのは。
気恥ずかしさもあった。
だけどそれ以上にきっと、交友を深めれば深める程、知らない人に思えたからかもしれない。
だからこそ昔は家族と通っていたラーメン屋を、伝えなかった理由はそこにある。
何でも共有したがっていた歳はもう過ぎたのだろうと。
もう昔みたいに人前で雪ちゃんとは気軽に呼び合う時期も、きっと。]
それじゃあね。
[言葉は飲み込み曖昧に笑みを浮かべながら二人に向かって手を振り教室を後にした。
あと何ヶ月かだけの関係。きっとそのうちどうでもよくなる。
一人欠けてしまったクラスメイトのように。]*
(109) 2015/03/29(Sun) 11時頃