――回想――
[女学院に入学した私ばかりの私は、本能のままに初対面の子達にセクハラしまわるほどの勇気は持っていなかった。いや、それくらいのデリカシーは持っていた。
その結果、大人しい子、という印象を植え付けていたと思う。本を読んで、さらりと髪をかきあげ、アンニュイに窓の外に視線を遣り、ため息を零す。特に意味はない。自分に酔っているだけ。
勿論、そんな私のナルシスな行動を周りが気に留めているわけがないことも知っていた。それでもしてしまうのが、思春期というものなんだろう。
だけれど、ある日そんな私に声を掛けてきたのは天真爛漫なクラスメイト――名を、櫻子と言った。]
……私に何か用?
[ああっ、素っ気ない。初めて交わす言葉をこんな冷たいものにするつもりはなかったのだ。でも、驚きと気恥ずかしさで、思わずそんな言葉が口を吐いていた。
それでも櫻子は笑顔を向けてくれていた。
ああ。この子は、信頼が出来る。なんとなくそう思った。]
(109) 2014/06/06(Fri) 17時半頃