[歓待室の中へ入ればまるで映画のような現実が迎えてくれる。
耳の尖った美男美女。腰までしかない給仕服を着た小人が居ると思えば、首が痛くなるほど見上げなければ顔が見えない巨体を持つ者。
あからさまに狼っぽい顔をした男に、ドレスの裾から二本足の代わりに蛇のような尻尾を見せつける女。]
[燭台の揺らめきとともに照らされる食事の数々は、なんだか高校生には見慣れないもので、美味しそうより作り物みたいだという感想が何故か浮かぶ。
炎の明るさだけでなく、空中をふわふわと光球が浮かびそれが照明として一役をかっていたりするのだろうか。]
…………はぁ。
[うまい言葉も出ずにただ口をぽかーんと開けるばかり。
入った直後から突き刺さる視線の居心地の悪さもまたよろしくない。]
「あれが例の」
「雄?雌?どう見分けを付けるのかしら」
「……はっ、動物臭え」
[最後の言葉にムッと来たが、こちとら部活帰りで拉致されたままなのだ。
家に帰ってシャワーを浴びようと思っていたのだし、汗臭いとしたらお前らのせいだからなと言いたい。もちろんビビって言えなかったけど。]
(108) 2018/11/26(Mon) 12時半頃