― 回想 / 同級生 −
[ あれは、わたし達が入学した年のことでした。
桜は青い葉を残すばかりで花弁を散らし、少しずつぽかぽかした気温が変化を見せ始める時期。
新入生たちが、やっと新生活に慣れる頃だったはずです。
わたしも友人が出来始め、専攻は違っても教養科目で隣に座った子とも仲良くなって。
その日もちょうど講義室で他愛もない話をしていた時、
ころん と足元になにかが当たりました。 ]
…… 消しゴム?
[ 誰かの落とし物でしょうか。
拾い上げて友人に顔を向けると、「あ、それアイツのじゃない?」という返事が返ってきました。
視線を指さす先に向けますと、そこにいたのは常に誰にでもフレンドリーな印象が強い、松本くん。
……どうしましょう。だれかと喋ってるみたいです。
割り込む勇気まではないのですが、落し物は返さないといけません。もう一回視線を戻します。 ]
(107) 2016/12/16(Fri) 23時頃