―昼/大衆食堂『森の真珠』・店内片隅―
[>>98>>99焦りをあらわにするトレイルを、カリュクスは理解できない。なぜ彼はいつもこうなのだろう。ふつうの子どもに与えられるような、やさしさ、いたわり。……そんなのは必要ないのに。
カリュクスは周囲の人間を、大きくわけてふたつに分類していた。
ひとつは、自分を信奉する者。もうひとつは、自分を利用する者。カリュクスに接するうち、ほとんどの人はどちらかにわかれていく。一部の例外をのぞいて。
トレイルはその、例外だった。はじめは学者や研究者にありがちな、変人、というものかと思ったけれど。そういうのとも違っていて。
今よりもまだ幼かったとき。研究者たちは、カリュクスが泣きもせずすべて受け入れると知れば、子どもに対する遠慮とか、なだめ声だとか、そういうものをいっさい取り払った。
必要ないからだ。無駄なことに時間を割く必要はない、それはカリュクスも理解できる。
だけどトレイルはいつまでも、カリュクスに甘い薬を差し出すのだ。その甘さを舌で感じとっても、彼がなぜそんなことをするか、カリュクスには理解できないというのに]
(107) 2017/08/11(Fri) 16時半頃