―5月4日夕方、チアキ宅―
[どれ程の時間が過ぎたのか――窓からの陽光は大分陰っては来ていたけれど日が沈みきっていない事を考えれば大して時間は経っていないのかもしれない。
ナユタは床へと両手をついてのろのろと立ち上がった。チアキはどうやら戻っていないようだった]
………チアキ…
[思いつく事態は幾つか。けれど本当の所はチアキ自身に聞かない限りはわからないだろう。このままここで帰りを待つべきか…考えたけれど、今は彼に会うのが――怖かった。
明日、せめて心の準備をして、それからチアキに会おう。それは半ば言い訳だったけれど、そうでもしないと何かが崩れ落ちてしまいそうに思えたから。
膝が笑いそうになるのを堪えながら逃げ出すように階段を降り玄関へと向かう。扉を開ければ入り込んでくる外気は、閉塞した心の中をも通り抜けていくように思えて、強張る体の力を抜いた。
振り向き二階の部屋へと視線を遣るが、想いを振り払うようにして首を振ると足早にその場を後にした]
(106) 2013/07/26(Fri) 22時半頃