「差し上げます。ぜひ読んでみてください。」[――『舞姫』と表紙に書かれた小説だった。読書は苦手だ。いつも読んでいたのは、漫画やスポーツ関係の雑誌だけだったから。]「もし先輩が、こんな私の話し相手にでもなってくれるというなら。 ぜひ、感想を聞きたいですね。……退屈ですし。」[だけど、そんな彼女の言葉を聞いて、俺はあっさりと頷いた。]分かった。またな、雨宮。絶対にまた来るから。[薄く微笑む彼女を見て、そうだ、これぐらいなら俺にもできる、と、そう思った。病気はどうにもならなくても、俺がいることで、少しでも生を諦めずにいてくれたら。それは、“エリス”との偶然の出会い。思い出すことのできない、大切だったはずの記憶のひとつ。*]
(106) 2015/06/22(Mon) 17時頃
sol・la
ななころび
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