[あの時、私はどうしたのだったかも、昨日のように。右手に視線を落とす。死にゆく鳥を助けることは、私の力では叶いそうもなかった。それに、其れは巡る命の運命(さだめ)であったから、私は左手で鳥には触れず。代わりに、右手を触れて鳥の魂に、触れた。見えたのは広く、青い空。その小さくも大きな魂の欠片を少しだけ取り込む代わりに私の右手に火傷に似た傷痕が刻まれて鱗がひとつ、落ちた。『大丈夫、鳥さんはあの広い空の向こうに羽ばたくために、今は眠りについただけだよ。』私は言って、左手で近くの少女の頭を撫でた。そうして、その手を亡骸の近く、土に触れて。土へと鳥から受け取った魂の欠片を、渡した。]
(106) 2016/10/07(Fri) 20時頃