じゃあお願いしようっかなー
ね、樹里さんもいいでしょう?
[夕の申し出に気持ち良さ気に笑いながら空を見上げる。
昨日の時もそうだが、普段夕は年の割には我を出そうとはしない。
年配者から見れば『お前が言うな』と言われそうではあるが、娘から見ても彼女は他人に対して思慮が勝っているように思えた。
どんな環境にいたのかはわからない。幼いながら抑圧された人生が、妙に達観した人格をかたどったのかもしれない。
そんな彼女に、娘は少しだけ自身の幼年期を重ねていた。
……同じ境遇というわけではないだろう。
自身に関しては形式上はちゃんと家元で育てられた。
一応仕送りだって送られている。
……酷く無関心であっただけ。いないものとしか扱われてなかっただけなのだから。
憶測でしか判断はできないが、私はきっと恵まれてはいるのだろう。
だから自身と彼女を重ねてしまうのは傲慢ではあるはずなのだ。
それでも…根幹の一端で、何かが重なるような…そんな錯覚を覚えた]
(106) 2014/01/01(Wed) 20時半頃