[千亜紀と名乗ってくれた、まだあどけなさが抜けない青年が、私の未練という言葉に興味を抱いたらしい>>35]
ちーくんでいいかしら?
んー、そうねぇ。下らないことよ。
自分が寝る時間を削って創りあげたものを、きちんと眺めてみたいとか、それを廃棄するなら自分の手でしたいとか。……そんなところ。
[言いながら思い出すのは最期の日。
冬の日の雑踏を歩く足取りは、睡眠不足の割には軽かったわ。
お客さんの目に触れる、自分が創り上げた子達をこの目でようやく見られる。
そんな高揚感で、歩む足取りは軽かった]
子供の頃からお裁縫が好きでね、その延長でぬいぐるみ作りしてて。たまーにハンドメイド関係のイベントに出てブースで売ったりしている、一応…作家? になるのかしら。
それでギャラリーカフェのスペースお借りして、今もまだ作品展示期間中。
ちゃんとお客さんが見てくれてるところ、見てないから。
……そんなものよ、私の未練なんて。悪いわね、面白い話じゃなくて。
[茶化すような笑みで千亜紀くんを見つめて。そうして、肩を竦めてみせた]
(105) 2015/01/18(Sun) 23時頃