――廃病院の一角――
……今日、ロイは「外食」だそうだ。
[そうベネットに告げたのは、ここでの生活にも大分馴染んで来たある日の事。
もうどれくらいの日数が経ったのか、この薄暗い鳥籠にいるとそれもどうでも良くなっている事に気づく。
精液以外を不味く感じてしまう体質になったキルロイが「外食する」と言えば、つまりは誰かと性的に交わるという意味で。
相手は自分達の主か、親友か――出かける際の態度は後者を示しているように思えた。
正直面白くはないが、変じた体質を思えば、それこそ彼には「外食」の感覚なのかと嫉妬心を飲み込んで見送ったのだった。]
……そういう時に、私の気持ちだけを案じて「今夜は自分が」と主張してこないところが好きだよ。
[此方を窺うベネットの青い髪にそっと手を伸ばす。
彼の父が人間から護ろうと術で隠して来た青は――触れると汚してしまいそうに美しい。
その柔らかな髪をふわりと撫で、魔に堕ちてから珍しくもなくなった微笑みを向けた。]
ロイがいない隙に、なんて狙ってた訳ではないが……
(104) Ellie 2016/06/20(Mon) 01時半頃