「あなたの着ているそのジャージ、知ってますよ。3年生の、帆北先輩。」
[指摘されて、少し慌てた。
部活の練習中に病院に連れて来られたものだから、その時にジャージを羽織ったままの格好でいた。
胸元にはハッキリと明確に、見れば分かるように、“3年 帆北”と名前が書かれてある。]
「私も、同じ中学の生徒です。2年生。もう、長いこと登校してませんけどね。」
お、おう、そうだったのか。
[同年代の女の子。その若々しい見た目通り、後輩だという事実に納得した。
長いこと通っていないなら、俺が知らなくても無理はなかっただろう。
だが同時に、こんなに病に苦しんでいる後輩がいるなんて今まで知らなかったことを、恥じる気持ちになる。
儚くて、今にも消えてしまいそうな微笑みを浮かべる彼女は、からかうような瞳を向けてくる。
おそらくは病によって色素の薄い灰色の髪が、顔の動きに合わせて揺れた。
その外見から抱く印象は、美少女、と呼ぶに恥ずかしくないだろう。]
(104) 2015/06/22(Mon) 17時頃