164 冷たい校舎村3-2


【人】 琴弾き 志乃

[ 小学校の入学式で、
 クラスメイトの女の子に言われた言葉がある。 ]

 「――しのちゃんって、かわいそう」

[ 確かその日は、
 母親がどうしても外せない仕事があって、
 入学式に遅れて参加せざるを得なかった。

 「ごめんね志乃、終わったらすぐ行く、絶対行く」と、
 可愛らしく着飾られた自分を抱きしめて、
 もしかしたら、自分よりも嘆いていた。

 歳の離れた兄は、その頃中学生で。
 中学校と小学校は場所が離れていたから、
 一人で登校することになったのを覚えている。
 
 ――へいきだよ。ひとりでいけるよ。だいじょうぶ。
 そう、真面目な顔で言った時の母の顔は、
 悲しそうだった、気がする。 ]

(103) 2015/07/10(Fri) 21時半頃

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