─5月4日 昼頃 町役場前広場─
[犯人は現場に戻る、とでも言うのか。
偽情報を流した張本人は、その場に戻り……少なからず、驚いた。
ざっと聞く限り、かなりの人がオスカーに投票しようとしている。
最初は、上手く行ったと思っただけだった。だが。
こうなってみると、逆に恐ろしい。]
……あたしが、情報流される立場、なら……?
[そういうことも。……考えようによっては、ありえた。
……一番怖いのは、そういうこと。
偽情報によってもたらされた流れだということは……知られない方が、いいのだろうか。
……だが明日、誰かが、オスカーの死体を確認したら?そして、彼が感染者でないということが、例えば死体の鑑定などで明らかになってしまったら?
そうなったなら……「偽情報」という手段が、もっと使われるように……なるのだろうか?
……自問自答が、止まらない。
若干恐ろしくなりつつも、彼女はしばらく、この空気に触れていることに決めた。
この空気を創りだしたのは、自分の責任なのだから。自分には、この空気に触れ続ける、義務があると思った。]
(103) 2013/07/26(Fri) 22時頃