閉じたまま渡されたその資料を開けば、彼女がさっと目を背けたのを確認した。…そうすれば少しその本を立てて彼女に見えないように気遣ったろう。]
(Jeff Richard......Paris....1857……)
[その中身を見つめながら、この男は故郷を共にする者、それから───ほんの少し先の人生を生きている、ということを知った。
それから、そこに書き連ねられた罪も。
(……嗚呼、本当に勿体無い。女性はその外側が美しいのに。)
彼女の言葉を聞きながら頁を捲れば……なるほど、それが先程あの部屋にいた金髪の男────そう、自分が故国が同じだろうと推測したあの男だ───こそが、この資料の人物だと知るだろう。]
……どうか、ご心配なさらず。この男が貴方に何かをしようとすれば、私がそれを食い止めてみせますから。…美しい女性をお守りする────それは、男性の務めですからね。
[見上げた時に彼女の瞳に雫が浮かんでいたのなら、安心させるように にこりと微笑んでみせただろう。
それから彼女の手を取って、その甲に軽く口付けようとしたか。]
(103) 2016/02/24(Wed) 14時頃