― 消失した回想・野球少年と“エリス” ―
[中学3年になったばかりの頃、だった。
練習で少し無理をしすぎて、脱水症状を起こし、病院へ連れて行かれた。
結局は何事も無かったが、医者の先生から「休む時はしっかり休まないと、いつか大きな怪我をするぞ」と釘を刺されて、ばつが悪かった。
その病院での診察の帰りに、休憩室に寄ってスポーツドリンクを買う。
自販機に手を突っ込んで冷えたボトルを持ち、待たせている顧問の先生のところへ戻ろうとした、その時。
どこからともなく感じる、煙草の香りと。
咳き込みながら床に突っ伏す人影が、視界に入った。]
……大丈夫ですか!
[咄嗟に駆け寄って、その肩を揺する。
その人は、病院の患者服に身を包んでいて、細身で、小柄の、灰色のセミロングの髪をしている――女性だった。]
(100) 2015/06/22(Mon) 17時頃