──護送車──
ひーまーひーまー。
[空色の囚人服に包まれた手足をばたつかせ、青年は子供のように暇を訴える。
彼が手足を動かす度に手枷と足枷がジャラジャラと鳴り、あと一時間ほどこれに付き合わねばならない監視役はうんざりとしたため息をついた。]
ねーおにーさん、これ外してー?
[青年は目の高さまで両手を挙げ、手枷を揺らす。]
外してくれたらー、えっとね、イイコトする! 俺ねーうまいんだよ、あにきにいっぱい教えてもらった!
[監視役は軽蔑のまなざしを向けるが、その意味は青年には伝わらなかった。なおも暇暇言い続ける青年に、これでも読んでいろと監視役は資料を渡す。
青年はぱっと目を輝かせ、それを受け取り、めくってすぐにつまらなそうに唇をとがらせた。]
……知らない単語ばっかり。読めない。
[ひまー、の言葉が、今度は読んでー、に変化して。監視役の受難はまだ続く。]
(100) 2012/04/07(Sat) 23時頃