[廊下もまた、年季を感じさせる作りだ。
踏みしめる度に悲鳴を上げるそれは、やっぱり紗弗斗荘の外廊下を思い起こさせる。
あのギィギィ煩い鉄廊下をどれだけ静かに歩けるかで、住人としての年季が図れたものだ。
一番凄いのは大家のおばーちゃんで、あの人は少しも音を立てずに歩くことができた。
マドカは、]
――ギィ
あぁ、ダメだなぁ。
いくら似てても、別人……いや、別廊下かぁ。
[そもそも鉄製と木製。中廊下と外廊下。
違いなんて当たり前なのだ。
それでも何となく面白くなってしまって、マドカはようしと拳を握った。
廊下は長く、ロビーを超えてさらに向こうにも続いている。
向こうの突き当たりにいくまでに、どれだけ音を立てずに歩けるか、勝負だ。
――もし人に見られたら怪しい人と思われること請け合いだが、マドカは恐れない。
だってこの旅館に、まさか年末にわざわざ泊まりに来る客が自分以外にもいるなんて、夢にも思っていないからだ]**
(99) 2016/12/26(Mon) 00時半頃