[自分はもう、この歳だ。未だ妻も取らずに独り身で気楽に生きている身だから、たかだか数年付き合ってやっても良いけれど。
しかし坊主のその数年と、自分のその数年は――まるで重さが、違うだろうに。
頭に浮かぶのは、そんな言い訳と、建前ばかり。]
……泣くなと言ったろうが……はあぁ。
[次第にゆっくりと、そしてついには止まってしまった坊主に引き止められるように足を止めて。振り返れば、そこにはまたも涙を流す坊主の姿。
その姿に、大きく一つ舌を打ち。本当によく泣く餓鬼だとうんざり顔を顰めたまま、絡められた腕を振り払い、触れる鎖をぐいと強く引く。]
――……勝手にしろ。今までだって勝手にしてた癖に、何を今更。
ただし、絶対に触るんじゃあねェぞ。……いいな?
[吐いた呆れの息は、坊主に対してか――自分に、対してか。最後に一つ念を押すのは忘れずに、坊主の頭を抱き締めるように腕を回す。]
(98) 2015/04/10(Fri) 21時頃