―5月3日早朝 薬屋「三元道士」店内―
[30分程、考え込んだだろうか。
なかなか働いてくれない頭を小さく振り、心理的なものなのか空腹はあまり感じぬものの何か胃に入れようと、適当にミルク粥を作る。
小皿に装った其れを片手に私室の机上、一番上に置いたノートを手に取り寝台に腰掛けた。
薬の調合法等の覚書きやアレルギーと薬品の関連などのページには目もくれぬまま指先を動かす。
パラパラとページを捲っていくと、ノートの中程に目的のページを見付けて手を止めた――人狼病、WWSについて自分でまとめたものだった。
膝の上にページを開いて乗せたまま、行儀悪くも粥を掬い、口に運ぶ。
町に流れる噂を書き留め、より確実性の高い情報には印を付けている。それらを食事と共に改めて情報として取り込んでゆく。
この状況ならば軍関係者ももう少し口が軽くなるだろうか?
スプーンに小さく歯を立てて思案。直ぐ浮かんだのは一昨日会った青年――ナユタの顔。
空になった皿を片付けて出掛ける為の身支度を整えると、店の扉に鍵をかけた後、歩き出した――]
(98) 2013/07/24(Wed) 21時頃