[マナーモードになっているスマートフォンがポケットの中で震えたことには気づいていた。
仕事中にスマートフォンに触るのは褒められたことじゃない。接客業ならなおさらだ。けれど私は特別に店長からの許可をもらっていた。
客足が途切れたタイミングでそっと確認する。甘那ちゃん。
小さな画面の向こうからでも金平糖のような華やかな彩りが伝わって来て、私は思わず頬を緩めた。
さすがに今返信はできない。そのままポケットへと戻す。
スマートフォンに触る許可をもらっているのも、母が理由だった。
母からの連絡は時間なんておかまいなしだ。そして、すぐに返事をしないと不安定になる。
店の電話にじゃんじゃん掛けてきたり、もっと悪いと店に押しかけて来て大騒ぎしたりする可能性だってある。
こんな爆弾のような母を抱えた私を雇ってくれている店長には、本当に頭があがらない]
(98) 2017/01/14(Sat) 17時半頃