[前方から向けられる剣、背後から投げかけられる声。
流れる水の様に横へ歩き、振り返る。
丁度、片目でそれぞれを捉えられるように立ち位置を取った。]
ふむ、『人でなし』を自認する物は、私の知る限り二人目だ。
『人でなし』は心で決まるもの――浪漫に富むが、それは違うな。
『人でなし』とは、文字通りだ。人の外見、寿命、道徳、その他諸々――とかく、人であるといわれている存在と自身との間に埋めがたき溝を持つ者のことだ。
正しい心持つことが人である証? ――人が正しい心を持っている証拠などどこにある?
そして悪魔も天使も『人であれ』る? ――如何とも埋め難い種族神格力量の差から目を背け、人の様に振る舞うような天使・悪魔が居るのならば、それは人であるのではない。莫迦であるのだ。
[目の前の水球を二つに割り、片方を黒衣の剣士、もう片方を東方の拳士へと向ける。]
(98) 2014/08/25(Mon) 01時頃