[ヘクターと別れた後、1人になった彼は再び何処を目指す訳でも無く歩き始めた。尊敬する先輩と、言葉では上手く言えない大事な先輩]
し、失礼します…
[そろり、と通りすがった教室の扉を開ける。途端、中から血なまぐさい臭いが立ち込め、込み上げてくる嘔吐感をなんとか飲み込む]
[無言のまま恐る恐る中に入る。中はしんと静まり返っていて、自分の息遣い以外聞こえてこない。みんな死んでしまっているのだろうか。生きている人の気配はしない]
[長時間こんな所にいるものではない。教室を出て行こうとしたところで、目に入ってしまった。恐怖の表情のまま血塗れで横たわり生き絶えているのは、半純血だと言っていた、オスカーのルームメイト]
っ…!?っ、げほっ、げほっ…!!
[耐え切れず、その場で噎せながら嘔吐感する。ぽろぽろと溢れる涙は、嘔吐による生理的なものか、それとも…]
(本当に、人が死んでるんだ)
[頭では分かっていても、初めて遭遇した知人の死にじわじわと実感が湧いてきて。それでも止まる訳にはいかないと、ローブの袖でごしごしと口を拭うと無人の部屋を後にした]
(98) 2015/02/06(Fri) 23時半頃