[無音空間で、男が何を言っているのかわからない。だが、怠惰をはねのけたことだけはわかった。男に向かう足を止めることはできない。6本の刀子が自らの方へと飛んでくる。それをよける術も、よける気力さえももとよりない。6本のうち2本が胴へと吸い込まれる。同時に、無音空間が割れる]
ガ…ッ
[痛み。どろりとしたぬるい感覚を感じ取る。だが、歩みを止めてはいけない。止めてしまえば自分がどうなるのか知っているから。
振るわれた刀子を肩で受け、左手ではポーチから強力な神経毒の入った注射器を取り出し、思いっきり男に突き刺す。
致死量の液体を流し込めばそのまま男を突き飛ばし、フラフラと後ろに下がる。黍炉の怠惰の葉は枯れ果てていたか。自分もあんなふうに枯れてしまうのだろうか。嫌だ。それは嫌だ。ぼやける脳を回転させ、ポーチから止血剤を取り出す。]
(96) 2014/12/31(Wed) 15時半頃