―回想:階段―
いやあの、すみません…
[懐中電灯で階段の先を照らし、駆け上りながら謝罪の言葉。しかしどうも体が熱い。ごまかすように急ぎましょうといって――さて、おかしい。]
おかしいってもんじゃないっしょコレ…!
[そうかだからやつらはのろいのかと。振り返って思う。白衣やら白い塊やらがずるりずるりと疲れも知らずに追ってくる。階段の先の先、照らすとやつらの姿が見えた。小さく舌打ちし、再び上へ向かうもたどり着かない。やがてパティが放り投げたナイフ。ぎゃっという耳障りな声。ずぶずぶと溶け込んでゆくような光景は見なかった。]
ナイフのせい、っつーことじゃないと、思うけど。
先輩、だいじょうぶっすよ。
[ふと階段の端、消火器を見る。電話越しの言葉を思い出しつつ、上へと懐中電灯を向け、――ぴたり。パティの様子に、動きを止めてそちらを見る。]
先輩、どうしました…あ、電話でしたか。
(96) 2010/07/21(Wed) 10時半頃