279 宇宙(そら)を往くサルバシオン


【人】 意匠造形 シルク

[ 最初はたぶん、虚の天井に溜まっていた。

甘酸っぱい匂いがすることに気づいたのはいつからだろう。
硬い岩肌に触れたのはいつだっただろう。

小石が削れて落ちる音を聞いたのは、
光が色を持つと知ったのは、
口の奥を震わせられるようになったのは、

       ――きっと、それが必要だったからだ。
         それが生存に適した造形だったからだ。

だって、地に降りることのできない足は細く、小さく。
片方に至っては、未だ気体の性質が強いのだから。


 それは己にとってあくまで成長であり、変化ではない。
 故に、最初から己は己であり、時を経て己になった。
 けれど、それはそういうものだ。当たり前のことだ。
 種族の差故の常識が、答えを形作れないでいる。]

(96) 2020/08/26(Wed) 01時頃

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