――廃ビル――……ッ、[額から顎先に伝う汗を手の甲で拭う。 返り血の混じったそれはべとりと手を汚し、つんと臭った。 呼吸を整えるのに深く吸い込めば、死臭と精の生臭さを交えてより強く鼻にこびりつき、奥歯を噛んで耐える。]せんぱいは上、ですよね。[ひゅ、と刀身の血を払う序でに、圧縮された空気の刃が壁を這い、覆う触手を斬り落とした。 床に落ちた触手はびちびちと蠢き、本能的――あるのかは知れない――に拠り所を求めるのか、もう屍肉の塊でしかないオークに群がっていく。 キルロイのことをせんぱい、と呼び、居所を探るように据えた目線で暗いビルの奥を見据えた。]
(96) 2016/06/04(Sat) 21時頃