[ ――でも、その中にいつも僕はいなかった。
いなかったよね。父さん、母さん。
家の中に設けられた僕の部屋。
夥しい本と武器と菓子に囲まれた”独房”の中。
僕は使用人が放り投げた鼠の生き血を啜り窓の外を見る。
(ドアも窓も、僕が外出できないよう施錠されていたけど)
世界の福音は遥か彼方、僕の元へは届かない。
でも、ねえ、お願いしたら叶えてくれるかな、ねえ?]
サンタさん。僕、今年はとびっきりいい子にしてます。
勉強もいっぱいしました、両親の言いつけも全て守りました。
そうして全ての人々の幸せを祈り続けました。
だから、ねえ――、お願い、サンタさん。
[吐息を吐けば室内だというのに寒く、息は白く。
香る匂いは今しがた啜った鼠の血の生臭さ。
(それでも、命を捧げてくれた君を儚く想う)]
(96) 2019/10/05(Sat) 22時頃