─応接間から庭へ─
[ハワードの記憶が1日ごと途切れてしまうと耳にしたのは使用人達の噂話からだった。
それを利用して事あるごとに彼には声をかけていたことを歩きながら考える。
いつもジェフは彼に声をかけるとき、何かに書き留められていたら困るため、何かに残してくれるなと頼んでいたのだが、今日を迎える前のハワード“達”は守ってくれているのかどうかは、分からない。
だが万一を考えて取り分け困らないものだけを口にしていた]
マダムにとうとう「あなたの絵画に対する執着“だけ”は本物ね」だなんて言われてしまった。
そろそろ出禁になるかもしれない。
確かにこんなに一途な男は僕だけだろうから。
[しつこい男だとこの館の大半には邪険に思われていることだろうとは思う。
だが1人くらい絵画を近くで見ることの出来る者に喋りたい時だってあったのだ]
こんなにも、あいしているのに つたわらないものだな。
[なにを とは言わずに。
笑みを浮かべながら、横顔を見つめる。そんなひと時をジェフが望む理由はなくなった。
さて、今度ハワードに名乗ることがあるならば、どう名乗ろうか。
考えてる間に庭にたどり着いてしまった]
(95) 2016/07/27(Wed) 14時頃