[ デメテルがおはなしを作っている時間、
ぼくは刺繍やレース編みをしている。
あのね、あの時キラキラしていたレースは。
蜘蛛さんのお家だったんだ。ぼくは、蜘蛛さんの
お家に手を伸ばして壊しちゃった。
背の高いピッパなら知っていたのかな…ぼくは
知らないからって、悪いことをした。
ぼくと同じ名前の、シルクという糸を作るのは
蚕さんだけじゃない。蜘蛛さんもそうなんだって
書庫の大きな本に書いてあった。
もしもぼくが、大事ながっこうを壊されたら
──とても悲しい。だけど、壊しちゃった。
それを知って、またぼくは泣くんだ。泣いたって
戻せないし謝りたくても、もう蜘蛛さんには会えない。
それを“こうかい”と言うのだと、この時ぼくは知った。ぼくはいつかせんせいに食べられる時こうかいされるような悪い子に……なりたくない。]**
(94) 2016/10/07(Fri) 18時頃