(こんな夢物語。こんなおとぎ話。存在しなければどれだけいいかと奥歯を噛み締める。人狼が出た、ということはつまりそういうことなのだ。"この村の誰かが既に死んでいて、其れに成り変わられている"――表現は可能な限りぼかした。多少は和らいだだろうか。スージーの気合の入れ方には思わず頬が綻ぶ。その表情も一瞬で、直ぐに真面目な顔で頷いた)
ああ。勿論。……ところで、その紙は…?
(遺体が持っていたものなら、何かの参考になるかもしれない。自分もイアンと同じようにしてのぞき込む。その数秒後、書かれた内容に絶句すると共に、先ほどは飲みこんだ言葉を吐き出した。もう本音を隠している場合じゃない。嫌悪しか込み上げなかった)
……あぁ、ああ、やっぱり貴族連中は科学を"金の生る木"だと勘違いしている!これだから、これだから僕は研究依頼をしてくる人間が嫌いなんだよ!
(その声は、もしかしたら廊下にも届いたかもしれない。だが、もうこの際気にしている余裕は…彼にはなかった)
(93) 2017/08/16(Wed) 09時頃