――夕刻・宿の高級な部屋――
[ この部屋から外の騒ぎは聞こえてきただろうか?
リッキィとて、状況が気にならない筈がなかった。
この夕闇すらかき混ぜる、洗濯機のような嵐の中、
獣の牙や爪による無残な死体が雨曝しにされている、
だなんて。ましてやそれが『人狼』の仕業ではないかと
囁かれているなんて。
今、この食堂に、宿にいる、どれだけの人物が、
不安を、恐怖を、その胸に抱いているだろう。
傷ましさにに吐息したらしいシスター>>53の様に、
胸を傷めているのだろう……想像しただけでも……。
シスター・オーレリアに勧められた通り、
ベッドに横たわり目を瞑る。相変わらず、外の嵐は
鎮静の様子が聞こえない。雨戸をがたがた揺らし、
銃弾のような雨粒が、硝子戸を撃ち抜かんばかりに
叩きつけているのだろう。
まるで、雷神でも呼んだかのような稲光が、
不気味にシルエットを浮かび上がらせる。
雨樋から濁流が溢れ、びちゃびちゃと弾ける。]
(93) 2017/08/14(Mon) 18時頃