[ >>66いつものように、優しく手を取られ、歩き出す。きらびやかなショーの舞台から、日常の喧騒の街の中へ。
途中で、どうやら昔の自分を知っているらしい人物に、声をかけられた。悪意はないようだから、ぺこりと小さくお辞儀をして。
それでもやはり、笑顔は浮かべられなかった。
こんにちはシルク。可愛らしい服だね、君の白い髪に良く似合っているよ。
そう言われれば、少し藤乃の様子を見上げながら、こくりと頷いた。
この服は、藤乃が自分に作ってくれたものだ。ゆきの声に、似合うと思ってと言って与えられた服は、遠い昔にボーイソプラノの少年が着ていた服らしい。紺色の、襟のついた、セーラー服のような服。
少しだけ袖が長くて、指先が見えるだけなのが気になるけれど、藤乃曰く、長いこと着られるようにとの事らしい。
その長めの袖を少し引っ張りながら、藤乃に繋がれた手をきゅっと握った。]
(93) 2015/09/13(Sun) 20時半頃